
【Eassy】ついにMV撮影が完結!〜真夜中のメリーゴーランド〜
皆さまから応援してもらった「真夜中のメリーゴーランド」MV撮影がついに完結した。そこで今回は、今年3月にリリースしたこの曲について記そうと思う。
この曲は、専門学校の卒業公演に向けて書いた曲である。
当時はイベント毎があるたびに、新しい曲を書いていた。(歌いたい曲が浮かばないなら、書いてやろう精神など)高校生の頃なんて、文化祭の本番当日に歌詞が仕上がることもざらであった。
書いた当初、自分が何を考えていたか、正直あまり鮮明ではない。ただ、卒業公演に向けて、自分が何を歌いたいかを考えたとき、よし、新しい曲を書こう。そんな気持ちで、「エゴイスト」と共に書き上げた。
歌い続けている曲、特に3-4年前までは大抵そんな感じで、書き切った時の記憶は鮮明ではない。吐き出すように、ノートにひたすら書き綴るように、ギター片手にものの数分で完成することが多い。
今振り返ると、当時私は卒業のための単位不足が確定していた。パニック発作などが原因で学校へ行くことや授業を受ける事が難しい時期が続き、出席日数が足りなかったのだ。
どうして同じように過ごせないのか。どうしてこんなに頑張っているのに上手くいかないのか。心が落ち込む日もどんどん増えていた。その反面、当初の舞台「ねがいぼし」の稽古を始めている頃でもあった。
落ち込みと、やる気と、気持ちの昇降が激しく、自分を保つことにも必死だったようにも思う。
そんな自分から逃げ出すように、もがくような歌詞が出来上がった。
実はリリースにあたり歌詞を変えている箇所がある。
2番Aメロ冒頭部分、当初はずっと
「大人の街で 響き渡る安い愛の掛け声」
と歌っていた。
これは、大人から掛けられる優しい言葉に、嫌悪感を抱いていた心がそのまま映った言葉。
“何も知らないくせに”と、周りから浴びる優しさを受け止められない自分がいた。
これをリリースにあたり、以下のようにあらためた。
「夢の中で はぐれた人の背中を見た」
“はぐれた人”とは、あの頃の自分なのか、あの頃よくしてもらった恩人なのか。今現実には疎遠になってしまった存在を、追いかけるような景色を映している。
優しさを受け止められなかったこの主人公を、より象徴的に映したかった。
疎遠になってしまったその裏側の、自分と周りの変化に焦燥感を感じている。
さて。ここからはサビの歌詞について。
「真夜中のメリーゴーランドに乗って
このままパジャマ姿で逃げ出すの
それか小さくなった白い海馬に乗って
あの頃の私に 会いに行く」
この歌詞こそ、この曲の真髄である。(サビなので当たり前ではあるが)
“真夜中のメリーゴーランド”とは、主人公の少女が想い描き創り出す世界の象徴である。そしてパジャマ姿とは、自分の着飾らない姿。その姿で夜の空に逃げ出すことは、まるでファンタジーのような描写にも聞こえるが、実は彼女のありのままを羽ばたかせるには相応しい、リアルな表現でもあると思っている。
そしてこの描写に重ねた“小さくなった白い海馬”
質問をもらうことも多いこの歌詞。“海馬”とは、脳にある記憶を司る場所。それが“小さく白くなった”というのは、幼い頃のように忖度など考えない、まっさらな素直な私になりたいという、願いであり、決意でもあるのだ。
そして、Dメロ。
「夜になれば魔法がかかるって
小さい頃のおとぎ話が好きだった
おもちゃ箱を飛び出して
魔法の粉で空飛んで
小人たちと森で暮らすの」
これは彼女のありったけの“自由の”気持ちを詰め込んだ箇所である。
書いた当初は、“魔法がかかるはずだったのに”という、やや悲観的な気持ちでいた。
しかし現在は、信念のような、むしろ自分の核心に気がついた瞬間のような。信じる心を取り戻し、ここから自由に羽ばたいていくための蓄えが備わった、そんな様子である。
現実逃避をするように、外の世界と自分を切り離すように、嘆くように書き上げ、歌い続けていたこの曲。
しかし歌っていく中で、あんなに遠ざけていた大人に自分がなっていくにつれ、少しずつ、新しいことに気がついた。
嘘のない、心からの人の優しさ。
誰もが平等に抱えている悩み。
怯えなくていい、自分を愛することの自由さ。
現在は、生きている中で様々な不安や苦しみが渦巻く中でも、自分を取り戻すこと、自分を愛すること、自分の心が素直であること。それらを祈るように、道標になるように。
そしてその不安に嘆き、俯く誰かが、躊躇わず自由に夢を見ることができるための子守唄となるように。
愛を込めて歌っている。
今回のMVは、いつもお世話になっている、ディレクター・スズキ イサナ氏に制作をお願いした。
今までも、「朝に溶けて」「誓夜」「行き先」のMVで力を借りている。
知り合ったきっかけは学生時代の共通の友人の紹介であったが、今ではすっかり彼の創る作品に魅了されているのだ。
彼の創る映像には、“におい”がある。自分でも忘れていたようや記憶の引き出しの取手を掴んでくれるような感覚と、どこか懐かしくなるような温度を感じる。
それは現実のような、夢のような。その狭間のバランスを扱うのがとても絶妙で、たまらない。
作品に取り掛かるとき、アーティストである私と同じ強い熱量で、楽曲や歌詞と向き合い、私の想う世界を丁寧に汲み取ってくれるおかげで、細かなことを私が伝えずとも、いつもイメージに相応しい企画を提案してくれ、その世界観を共有できる、とても信頼している監督だ。
元々、作品に自分が演者として映ることに自信がなく、あまり気が進むほうではなかったが、全力でぶつかり、共に曲を想って考えてくれるこの人となら、挑戦したいと思うことができる、全てを委ねられる安心感がある。心強い、おと.のチームメイトである。
今回も、ほんっとうに沢山力を貸してもらった。初めて遠方での撮影で、寝る間もないほどにあちこちを周る撮影を数日かけて行った。もう本当に、感謝しても仕切れないほどである。
だからこそ、もっとビッグな姿になって、もっと色んな選択肢を選べるようになった中で、色々な世界を一緒に作ってもらうことが、私の活動の中のひとつの目標である。
というわけで、そんな大信頼の仲間に作ってもらったMV公開ももうすぐ。
どうかみなさま、色んな愛のこもった映像も、楽曲と共にたっぷり受け取ってもらえたら。
そして、ぜひ、皆さまにはどんな色で映るのか、声を聞かせてほしい。
「真夜中のメリーゴーランド」
これからも自由を守るために、大切に歌っていく。
▼「真夜中のメリーゴーランド」配信先